最近の学会発表


2018.06.03

商業地における街路景観色彩のまとまり度の変動
街路を移動しながら連続した景観画像を撮影し、その画像中の色彩の「まとまり」の度合いや時系列変動を分析した。歴史的な町並みを保全している街路の景観画像色彩の「まとまり度」の標準偏差は小さい。これは「まとまり度」が一定範囲に収まっているということであり、見方を変えれば単調なシークエンス景観とも言えよう。屋外広告物の多い街路では、その影響が濃く反映されて視点移動に伴う「まとまり度」の変動の周期性が強くなっているものと考えられる。反対に広告物の少ない街路の変動周期性は弱い。しかし、屋外広告物だけで周期性を判断することはできないことがわかった。道路境界線からのセットバックや駐車場脇の壁面が景観画像内に大きな面積を占めることがあり、屋外広告物と同様の影響を及ぼしているのではないかと推測される。また、幅員が広く、景観画像中にそれら屋外広告物や建物が占める面積が小さい場合は、当然ながらその影響は小さくなる。幅員が広くても、街路樹や工作物によって視野が狭められており、道路の反対側が見えない街路では屋外広告物や街路軸に直交する建物壁面の影響を強く受ける。そのため幅員の狭い街路と同様に周期性が強くなる。
単独/日本色彩学会第49回全国大会(大阪市立大学)

2016.06.05

視点移動に伴う景観色彩のまとまり度の変動周期
街路を移動しながら景観の動画を撮影し、動画像を構成している色彩の「まとまり」具合を分析する手法は、全体性や関係性を排除せずに景観の特徴を把握する方法の一つであると考えられる。これまでの研究では、歴史的景観の保全に努めている地区の街路では「まとまり度」が高いことが明らかになっている。また、移動に伴う「まとまり度」の時系列変化を分析することによって、屋外広告物が街路景観色彩のまとまりに影響を与えていることも明らかになった。しかし一方で,派手な大型屋外広告物のある郊外幹線道路がなぜ単調に感じ、雑然とした小さな商店街に活気を感じるのかという実体験の違いを説明するには至っていない。今回の研究では、それぞれの街路の「まとまり度」の時系列変動には周期性があることが明らかになった。さらに周期の関数としてスペクトル密度を分析すると、活気のある商店街だけが他の街路とは異なった特徴を有していることがわかった。「活気」の定義は難しい課題であるが、同様の周期性を持つ街路を数多く発見できれば、「活気」の解明につながるのではないかと思われる。
単独/日本色彩学会第47回全国大会(名城大学)

2015.11.14

街路シークエンス景観における色彩のまとまり度の変動周期
歴史的景観の保全に努めている街路では、景観色彩の「まとまり度」が高いことがわかっている。今回は、視点移動に伴う「まとまり度」の変化の周期に着目して分析を行った。「まとまり度」の変動に隠された周期性に、「活気」という実体験を説明するヒントがあると考えた。「まとまり度」の変動周期は、歴史的景観を保全している街路であっても、地方都市の郊外幹線道路であっても類似したスペクトル密度分布であり、活気のある商店街だけが他とは異なるスペクトル密度分布特性を持っていることが明らかになった。
単独/芸術工学会平成27年度秋季大会(福岡)

2014.10.18

シークエンス景観における色彩の「まとまり感」の変化
街路景観を連続的に変化するシークエンスとしてとらえ、視点の移動に伴う景観色彩の「まとまり感」の変化パターンを分析することで、街路景観の「良好さ」を数値化できるのではないかと考えている。本論では、分析をCIELAB色空間で行なった場合と心理メトリック量を用いた色空間で行なった場合を比較し、妥当性を検証した。心理メトリック量を用いた分析は概ね良好な結果を得ることができたが、一部の街路ではLABとの相関係数が小さい上、感覚的には疑問を抱かざるを得ない結果となった。
単独/平成26年度日本デザイン学会第5支部研究発表会(九州産業大学)

2014.05.25

視点移動に伴う景観色彩の「まとまり感」の変化
街路景観の「良好さ」を担保する色彩の特徴のひとつとして、ある程度の「まとまり」があることがあげられる。筆者は、景観を撮影した画像の色彩の第一主成分寄与率が「まとまり」の度合いを示す指標となり得ると考えている。これまでの研究では景観色彩をCIELAB色空間で分析を行い、視点の移動に伴って変化する第一主成分寄与率が概ね「まとまり」度を示していることが確認された。今回は心理メトリック量を用いた分析を試み、その妥当性を検証した。その結果、特定の景観で妥当性が疑問視される結果が得られた。
単独/日本色彩学会第45回全国大会(九州大学)→CiNii(本文PDF)

2013.12.07

シークエンス景観の色彩の変化
街路景観の「まとまり」度を景観画像の色彩(CIEL*a*b*)の第一主成分寄与率で示し、移動に伴う寄与率の変化を調査した。研究では歴史的町並保存地区の街路、新興住宅地、商店街、地方都市の郊外幹線道路など個性が異なると考えられる街路を調査対象とした。その結果、寄与率の変化をいくつかのパターンに分類できる可能性を指摘することができた。
単独/芸術工学会平成25年度秋期大会(名古屋)

2013.05.25

視点移動に伴う景観色彩の変化と「まとまり感」
街路移動に伴って景観は変化する。その際の景観画像の色彩の第一主成分寄与率が「まとまり感」の指標となると考えている。寄与率の変化パターンを明らかにすべく、歴史的町並みや景観地区の景観色彩を調査分析した。植栽が豊かな景観では寄与率は低くなるが、寄与率が短い周期で変化するパターンは保持される。このパターンが崩れるのは周囲から逸脱した色彩の大きな壁面あるいは工作物が視野に入る場合で、そこを通り過ぎるまで寄与率は低下の一途をたどることが明らかになった。
単独/日本色彩学会第44回全国大会(早稲田大学)→CiNii(本文PDF)

2012.12.08

シークエンス景観の色彩分析手法
街路に面する建物の全ての壁面が同一色であとしたら,その街路は「単調」であり,必ずしも「良好な景観」とはいえない。ある程度の色彩のバラツキが必要である。しかし,そのバラツキが大きいと、今度は色彩の氾濫になってしまう。街路を移動する際の景観色彩のバラツキの変化パターンが景観の単調さを示す指標となるのではないかと考え,その変化をとらえる実験と分析の方法を提案した。
単独/芸術工学会平成24年度秋期大会(東京)

2011.11.05

街路景観の色彩情報の定量分析
眺めとしての街路景観の色彩情報を定量的に把握分析する手法を構築した。また,その手法を用いて個性の異なる街路景観を比較した。さらに,景観をシークエンスとして捉え,第一主成分の寄与率の変動に着目することが,個性の抽出に有効であるという手がかりをつかむに至った。
単独/芸術工学会平成23年度秋期大会(金沢)→CiNii(本文PDF)

2011.05.15

街路景観の撮影画像の色彩分布と視感測色の色彩分布の比較
実務にあっては,眺めの景観の色彩を捉えた街路景観撮影画像データの情報を,建材等の物体色にフィードバックする必要がある。そこで,両者の色彩分布のにはどのような関係があるかを比較検討した。その結果,外壁色は,軒の出や庇による陰影などを指標化することで,撮影実験値から建材等を選定する可能性が見られたが,屋根色については困難が予想された。
単独/日本色彩学会第42回全国大会→CiNii(本文PDF)

2010.05.15

景観地区におけるマンセル値による色彩規制基準の比較
景観地区における景観形成の色彩基準のうち,マンセル表色系による数値制限を設けているものを定量的に比較検討した。その結果,GYからRPにかけての色相ではばらつきが小さく類似性が高いことがわかった。特に歴史的な景観の保全を目的の一つに掲げている地区においては,その類似性が一段と高く,地域の特徴伸張を目的に策定された基準が結果的に均質化をもたらす恐れがあることが一層明らかになった。
単独/日本色彩学会第41回全国大会→CiNii(本文PDF)

2009.05.16

景観地区における色彩規制基準の相違について
景観地区における景観形成の色彩基準はマンセル表色系による数値制限が多数を占めている。それら基準の地域差は,R,YR,Y系の色相において僅かな差として認められた。しかし,何を根拠に色彩を制限し,個性ある良好な景観形成をしようとしているかを基準から読み取ることは困難である。現状の基準は,全国で大変似通っており,規制によって個性化とは反対の均質化を促進することにもなりかねない危惧がある。
単独/日本色彩学会第40回全国大会→CiNii(本文PDF)

2008.05.18

都市郊外と歴史的町並みの街路景観色彩の相違について
都市郊外景観と歴史的町並みの景観とは,時間軸に沿った色彩分布の揺らぎに違いがある。歴史的町並みの景観では第一主成分寄与率は常に高い割合を保ちつつ,一定の範囲で変動している。この高さが「統一感」を,変動が「非単調さ」を醸し出していると考えられる。一方の郊外景観では,大型看板に近づくにつれ寄与率は徐々に低下し,看板を通り過ぎると寄与率は非連続的に高くなる。
単独/日本色彩学会第39回全国大会CiNii(本文PDF)

2007.12.08

歴史的町並みの景観色彩(愛知県犬山市)
歴史的町並みを有する愛知県犬山市城下の景観色彩の特徴分析結果を述べるとともに,色彩分布の主成分分析の有効性について論じた。また,景観画像の第一主成分寄与率が視点移動に伴ってどのように変化しているかを分析した。福山市郊外の幹線道路の街路景観では,寄与率は滑らかに変化し,看板類があると非連続的な変化が生じることが明らかになった。一方,犬山城下の街路景観では,常に高い寄与率で推移し,若干のブレを伴っていることが明らかになった。
単独/日本色彩学会関西支部九州色彩ネットワーク研究会in福岡2007

2006.12.09

地方都市の郊外幹線道路の景観色彩
福山市郊外の街路景観をサンプルとして,景観色彩のクラスター分析の三次元表示手法,偏差十字体によるバラツキの表示手法などを解説するとともに,それらから読み取れる景観色彩の特徴(建物,看板,植栽)を述べた。また,都市郊外の街路景観が単調である原因が,視点移動に伴って変化する景観色彩の構成の変動幅が狭いことにある可能性があることにも言及した。
単独/日本色彩学会関西支部九州色彩ネットワーク研究会in福岡2006

2006.03.04

車両色が景観画像の色彩分布に与える影響
都市景観の色彩分布を調査するために撮影した景観画像に写っている車両の色彩は,景観画像の色彩分布に影響を与える恐れがある。分析の結果,車両が画像全体に占める割合が5%以下であれば,車両の色彩は景観の色彩分布に影響を及ぼさな いことがわかった。また,車両部分を統計対象から除外すると,車両が存在しない状態の景観に似た色彩分布をシミュレートできることを明らかにした。
単独/日本色彩学会画像色彩研究会2005年度研究発表会→CiNii(本文PDF)